御座の方言集     森田利一編
(な〜の)                  



A B 言葉 意味(左の項目Aの○は広辞苑第六版にも見られる言葉。項目Bの◎は御座郷土史にも見られる言葉)
【な】
@(縄)。A(菜)
ないもせんものお 数少ない物を。
いのよわり 体内の内臓から来る弱り。
  ない ありません。ないよ。
ない →<ないわい>
なおしとく (直しておく)@使った物を元の所に戻しておく。A修理をしておく。
なかたがい (仲違い)不仲。仲が拗れること。
なかにし (中西)北西の風。
女性の腰巻。衣巻。湯文字。おこし。
@(仲間)相手との共有物。Aグループ。B(中真)西北西の風。
なかまがけ (仲間掛け)漁師言葉で、漁網を他の漁師と共同で沖に仕掛ける共同作業。
まにし (中真西)西北西の風。
がもん (長物)マムシ。
  きた 泣き虫。よく泣く子。
  なぎだ (凪垂れ)風のおだやかな天候
なきびそ →<なきた>
なぎのったい 無風状態。穏やかな天候。
きゃがる 泣き叫ぶ。
なぎれる 舟の位置が強風や潮の流れでうまく定まらない。
@(凪ぐ)風がおさまる。止まる。A(薙ぐ)草木をなぎ倒す。
ぐい 出ている料理を手当たり次第腹一杯食べること。
なごか @和やか。Aおだやか。
なすび (茄子)
@そうではありません。違います。Aなぜ。Bどういたしまして。
なぞえ 穏やかな勾配。例→ゆるやかな坂道。
  なったぁらかたら なんとかかんとか。あれこれ様々と。
なったやかや →<なったぁらかたら>
なっといてくる。 怒鳴り込む
なっとお 何と。どう。
あぁ 今何と言ったのですか。
なっおしたって 誰が何を言おうと。どうあろうと。
なっおしたんぞ どう致しましたか。如何致しましたか。
なっおしょおと 何をどうしょうと。
なっおするんぞ @何をすればいいのですか。あるいは何をどの様にすればよいのですか。A何事をするのか。しては駄目。
なっおなと 何んとでも自由に。思うがままに。
なっとか →<なっとぞか>
なっやぁ 何だとー。(年下の人に使う言葉。)
なっしたんぞ どうしたんだ。何をしたんだ。
  なっぞか @何か。どうにか。A何か良い策でも。良い案でも。
なっ なんとも。どうしようも。
なっもかとも @なんともかんとも。Aどうしようも。
なっもならん 如何様にもならない。
なっーゆー 何という。なんたることを言う。
なにげなしに (何気無しに)何の気もなしに。
なにもかも (何もかも)
なにやかや (何や彼や)あれもこれも。いろいろ様々。
なにやら (何やら)何かを。
(群ら)魚の群れ。
ぶりこたら もてあそぶこと。
ぶる (嬲る)物に触る。さわる。
なまぐさい (生臭い)生の臭い匂いのする。
なま (純)@怠け者。不精者。なまくら坊主。A切れ味の悪い刃物。
なまし (生し)生乾き。完全に乾燥していない物。
なま (生寝)寝不足。
  なまらはんじゃく (なまじ)(なまはんか)@中途半端。A不用意 (なまじ)は万葉時代からある言葉で、少々古風な響きがあるが、くだけた言い方の(なまじっか)なら今も会話で用いられている。不十分・いいかげんの意の(生)に「強いる」が付いた(生強い)に由来すると言う。(なまじ体に自信があったため不摂生してしまった)(なまじ口を出したばかりに、けんかになった。)そんな事をしたのでかえってと言った後悔の気持ちを込めて使う。(なまじ)の苦い思いでは誰にでもあるのでは。
  なめ だらしない。しまりがない。
なめくる 粘る。
なめくじ (蛞蝓)ナメクジ。
なめくじら →<なめらくじ>
@(舐める)。Aヌルヌルする。B→<あめる>または<ねぐさい>
なもないほど すごく多い。沢山の。
なやーせん ならん。どうにもこうにも致し方がない。
ならう 神仏に供えた品物を下げる。取り下げる。
なり (形)みなり。体のよそおい。体型。又は着物などの様子。
こむ 怒鳴り込む。
なりも 果実類。
なる @鳴る。A怒鳴る。B筏用の間伐材。
るだけ (なるたけ)漢字を当てれば(成る丈)は(ありったけ)(思いのたけ)の(たけ)と同じ。ある限り、あるいはあるだけ全部の意。辞書の見出しは(なるたけ)だが、本文中に濁る表記を載せるものも増えた。三省堂国語辞典は、第3版(1982年)から(なるだけ)を追加している。もっとも(なるだけ)は、(知らぬ躰をして)樋口一葉、「たけくらべ」…など古い用例もある。(できるだけ)も(丈)から転じた助詞。濁っても誤用とは言えないだろう。
なるべく →<なるだけ>
ろで 並んで。列を組んで。
なんしょ (内緒)他人に知られたくないこと。内密。隠し事。
なんしろ (苗代)
なん 何ですか。又は何かご用ですか。
  なん →<なんぞい>
なん 何かを。
  なんでんで →<なんでもかんでも>
  なんでもかんでも 何が何でも。何としてでも。
  なんとかかんとか どうにか。ようやく。辛うじて。
  なんにせい いずれにせよ。
なんにも 何も。
なんば トウモロコシ。
なんぼく (南北網)又は四艘張り。四隻の舟が網の四隅をそれぞれ舟に積み、船頭の指示で東西南北に別れて網を張る漁法。
  なんやらたら 色々様々。
なんやらかやら あれやこれや。→<なんやらかたら>
【に】
にー (荷)荷物。
にえくりかいる (煮え繰り返る)@お湯が沸騰する。A非常に腹立たしい。
にえこぼれる 沸騰してお湯が溢れ出る。
こむ 弾みをつけて飛び込む。あるいは勢い余って海や河や湖に落ちる。
にえる (煮える)@煮物が出来上がる。沸騰する。(ここから比喩として「酷暑で体が煮える」とも言う。)A→<にえくりかえる>
にがうりがお (苦瓜顔)渋い顔付き。
にげごし (逃げ腰)
にこほがと 笑顔で。にこやかに。
にごめし (二合飯)漁師が大漁時に一人当たり米二合割合で炊くご飯。
にしく (西暗)明日の天気は西の方向が暗いから天気は下り坂ではなかろうかと予想すること。
にじくる 無茶がきする。滲くる。
(螺)小さい巻貝の一種。
にしぼ (西火照り)酷暑。夏の炎天下。
にしま 西南西の風。
にしめ (煮染め)@煮しめ料理。A煮しめの汁が滲んだような汗染みや衣服の汚れ。
にしめる (煮染める)@衣服がすごく穢く汚れている。Aおかずを煮しめる。煮詰める。
にしゃき (煮炊き)
にしゃこ 善悪の判断の出来ない人。あるいはその様な子供。子供。
にじりつける なすり付ける。又はかこつける。
にすけ 食事を一旦断りながら直ぐ食べる人。
にすぎる @(荷過ぎる)荷が重い。又は重過ぎる。A責任が重過ぎる。
にそくさんも (二束三文)安いことの喩え。買い叩かれること。→<さんものあめがす>
にたにたと 苦笑いしている様。含み笑いしている様。
にたもさんたも あいつもこいつも。誰れも彼れも。
にたりよったり (似たり寄ったり)両者共にすべての点でよく似ていること。
  にっ 薩摩芋を煮て皮をむき、適当に切り天日に干した食品、又は芋菓子。(越賀、和具地区では「きんこ」と言う。)
にっちもさっちも (二進も三進も)どうにもこうにも身動きの出来ない状態のこと。
にっちゅう (日中)真昼間。日盛り。
っばちがつ 二月と八月。
てもやいても (煮ても焼いても)
にとる (似ている)
にない (担)水を入れて運ぶ桶。担い桶。
なう (担う)@荷物などを肩で持つこと。A担当すること。B責任を負うこと。
にはん 判断のしかねる天候。
  にみそ (煮味噌)魚や肉や野菜等を一緒に味噌で煮こんだ味噌。
にもちかいもち (荷持ち回持ち)何回も何回も持ち運ぶこと。
にやける いやらしく気取る様子。主に男性に対して使われる。変にニヤニヤしているから「にやける」と言う訳ではない。(弱)(にやく)、あるいは惹気(にやけ)が動詞化したもの。古くは、(にやけ)と言ったのが(ニヤニヤ)に影響されて(にやける)になったようだ。
にやげる (煮上げる)
にやす (煮やす)物に火を通す。
にゃんこ 赤ちゃん言葉で、ネコ。
  にゃんにゃ →<にゃんこ>
にゅうめん (煮麺)
にょうにょう お経。
にょらいさん (如来さん)@仏の尊称。A仏教心の旺盛な人。
にん 人間。
にんじ (虹)
【ぬ】
かすな 何事も言うな。喋るな(罵声語)>
ぬかにくぎ (糠に釘)むだ。糠に釘を打っても何の効果もないことの喩え。
ぬきさしならん (抜き差しならない)都合がつかない。遣り繰りがつかない。
ぬく (温い)暖かい。
ぬくたご 日当たりのよい風陰。
ぬくまる 温もる。
ぬくとめる ぬくめる。温める。
ぬくぬくと 何に不自由なく。悠々自適に。生活の豊かな人が過ごす様を形容する言葉。
けさく (抜け作)思考がどこか抜けた人。軽薄な人。
ぬけとる (抜けている)考えが足りない。
けぬけと 言いにくいことを相手に対しズバズバと悪びれずに言う様。
ぬっくらと 安々と。まんまと。
ぬったように (塗った様に)左官が壁を美しく塗る様に人に上手口を言う様。
ぬれしろ (濡代)漁師の網元が大漁時に水夫に寸志や心付を渡すこと。
【ね】
ねー ない。
ねぇだらん (寐足りない)予寝不足である。
ねがえり (寝返り)@寝ている方向を変える。A味方に背いて敵方に付く。
(根際)すぐそば。傍。
ねぎさん 神主さん。
ねぐい。 食品が腐敗している。
ねぐ (寝狂い)就寝中に無意識に動き廻る仕草。
ねこかす →<ねこっとる>
ねこかぶり (猫かぶり)はずかしがりや。
ねこじた (猫舌)
ねこなでこえ (猫なで声)甘え声。
ねごい (寝濃い)眠りが深いこと。
  こっとる ぐっすり深いねむりに」入っている。ぐっすり眠っていて何が起こったか知らないでいる。又、見てもいないのに、いかにも見聞して来たふりをする。京都の観光をしてきたと嘘をついた人が、白川はどうでしたかと聞かれて、川の名前だと思い、夜船で通ったから寝ていてわからなかったと答えたという笑い話に由来する。
ねこばば 人様の物を掠め取ること。
ねこのおびや (猫の産屋)お産の軽い人の喩え。
ねこむ (寝込む)病の床につく。
ねこもしゃくしも (猫も杓子も)老いも若きも。君も僕も。すべての人の喩え。
  ねこる 死んだように熟睡する。→<ねこかす>・<ねこっとる>
ねだらん (寝足らん)睡眠不足である
ねじきる @(捻じ切る)何回も捻じて切る。A人の意見を捻じ伏せる。
ねじくび (捻じ首)首を左右に捻る仕草。
ねじこむ (捻じ込む)無理やり押し込む。挿し込む。
ねじふじ 拗ねる様。
ねじめがある 根性がある。
ねじゃか 病に弱く、寝ている日の多い人。又は寝てばかりいる人。
ねそねそと はきはきしない様、元気がない様を形容する言葉。
ねそべる (寝そべる)所かまわず寝ころぶ。
ねたがえる 睡眠中に無理な姿勢で肩や首や腰などをいためる。
ねだやし (根絶し)すべてを無くすこと。
ねたろお 暇さえあれば寝ている人。
  ねちこい 粘り強くしつこい。
  ねっちゃら 乳児や老人が柔らかい便をお襁褓(むつ)からはみ出すほど多くしている様。
ねっちら 粘り強くしつこい様。→<ねっちりと>
  ねっちりと 粘り強く。物静かに。穏やかに
ねっとりと →<ねっちりと>
ねつらう 人の物に狙いをつける。
ねどころ (寝所)寝室。寝床。
ねとぼける (寝惚ける)寝ていて起きた直後に人に何か言われてもまだ頭が冴えないので辻褄の合わないことを言ってしまう。
娘。
ねばくる →<なめくる>
ねばる (粘る)粘り強く頑張る。
ねぶ (根深)ネギ。
ねぶ 眠い。
ねぶと おでき。又は赤く大きく腫れるできもの。
ねぶこける @居眠りする。A(眠りこける)正体なく眠る。
ねべ (寝屁)眠っていてオナラをすること。
ぼさく →<ねぼすけ>
ぼすけ (寝坊助)よくねる人。あるいは寝過ごして時間に遅れる人。
ほりほり (根掘り葉掘り)何から何まで残らず問いただす様。
ねもはもない (根も葉もない)何の根拠も証拠もない。事実無根の状態を形容する言葉。
ねや (閨)寝室。寝床。
ねら (睨む)@目をいからせてみる。A見当をつける。
ねりこにょおらい →<ねっちゃらがい>
ねんざいげ @自惚れの強い人。A派手を好む人。伊達こき。
ねんじる (念じる)神仏にお願いする。
ねんこ お爺さんやお婆さんと幼児が一緒に寝ること。又は父母以外の家族と寝る子供。
ねんだいき いろいろしつこく相手に聞きただすこと。
ねんじゅう (年中)何時も何時も。毎度
ねんない →<ねんじゅう>
ねんね 早く寝なさい。幼児言葉で、寝ること。
ねんねこ 子守をする際に子供の上に着る半纏。
【の】
のー (野)野原。はらっぱ。
のーいき (余力)船のエンジンを止めても、ある程度進行する状態。
のーお @相手の問に答える返事言葉。A相手の問いかけに判断に迷い生返事をする時の言葉。
のーげ (能気)効能。効果。効力。
のーだ (飲んだ)
のおがき (能書き)@効能を記した文書。A長所や得意を並べ立てること。
のおなし (能無し)何もすることがなく毎日のように遊び回っている、あるいは身を持ち崩している様、または人。
のおのおと 遠慮もしないで公然と。
のく (退く)しりぞく。
のぐ (脱ぐ)着ている物を脱ぐ。
のぐそ (野糞)野原で用をすますこと。
のけもの →<のけもん>
のけもん (除け者)その人を仲間から除外すること。
のける (除ける)物を移動させる、又は取り除く。
のごう (拭う)
のこのこと @慌てることなくゆっくりと。A今になって、どの面さげて。
のさばる わが者顔に威張り散らす。
のし (主)
のじ 死んだ魚。
のじゃが (伸し上がる)
@(伸す)曲がっている物をまっすぐにする。のばす。A相手をやっつける。ノックダウンする。
のそのそ 動作が鈍い様
のたうちまある 苦しみ悶える。四苦八苦する。七転八倒する。
のたくる →<のたる>
  のたる 手足を伸ばして腹這いになる。
のっかかり (乗っ掛かり)作業開始直後。
のっけ 直ぐ。真っ先に。最初に。→<のっかかり>
のっこお (脳硬)頭。
のっぴきならん (のっぴきならぬ)@遣り繰りが出来ない。融通がつかない。A対人関係上、絶対守らねばならない
のろのろ →<のそのそ>
のはっぱく @原っぱ。野原。A殺風景なこと。
のっぽ 背の高い人。
のびゃがる (伸び上がる)
のふぞぉ @物を大切にしないこと。無遠慮な横着者に対して言う言葉。
のぶとい (野太い)図太い。どん欲な。
のべつまくなし (のべつ幕なし)休むことなく連続で。休憩時間もなく通しで。
のほほん のんびりと。暢気に。気軽に。
のぼす @(逆す)頭に血がのぼる。逆上する。A事に夢中になる。熱中する。
のぼせあがる (逆上せ上がる)自惚れる。
(鑿)御座では磯のみのことを指す。
のみかぶる 大酒を飲む。
みすけ (呑助)大酒飲み。酒豪者。飲兵衛。
のみのきんだま 小心者。→<のみのしんぞう>
  のみのしんぞう (蚤の心臓)気の小さい人の喩え
  のや (縫い上げ)着物の裾や肩の袖上げ。
やげる (乗り上げる)
のらくら のらりくらり。向こうに行ったり彼方に行ったりゆっくりと。
のりこす (乗り越す)水が容器から溢れ出る。
のりこむ (乗り込む)話のけじめをつけに行く。あるいは談判に行く。
るかそるか 勝ちか負けか。

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